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樫山は周防に1枚のカードを渡す。
「まだ少し先ですが、店を移転することにしました。今度はバーというより、レストランに近い形を予定してます。路面店になります」
「え、路面店? どうしてまた」
「いろいろと変化の時だと思いまして」
「変化って、おいおい、樫山君までのろけか?」
「違いますよ。でも、由梨さんのおかげであることは間違いないです」
樫山はそう言って微笑み、店の奥に引っ込んだ。そして椅子を1つ手に持って戻り、周防の横に並べた。
「地下って場所が嫌になったわけじゃ、なさそうだな」
その場に立ち、薄暗い店内を愛おしそうに見つめる樫山を眺めながら、周防は推察を始めた。
「やはり、由梨か? 金か? ああ見えて、お嬢様だし。金が必要になったのか?」
「いえいえ」
周防はカードに書かれた営業時間を確認しながら、「オープンが5時半で、クローズは11時? 随分と早いな。あ、つまりあれか? 夜はゆっくり二人でエッ」
「違います」
樫山は真顔で周防の言葉を遮る。
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