1 城ヶ崎由梨の気がかり

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 樫山は、尤もらしく目を瞑り、タロットをシャッフルし素早くテーブルに並べた。いくつかの質問を挟み、カードが次々と開かれていく。 「えー。それって結婚しないほうがいいってことぉ?」  占いを終えた樫山に、由梨は口を尖られた。 「そうですね。占いによると、そうなります」  はっきり言って、占いは適当だ。タロットカードの意味を知り、あとは相手の心を読み、それを利用して話しているだけなのだから。 「ショック。その人、優しくって超イケメンなのに」 「イケメンですか」 「あ、マスターには負けるよ」 「もしや、何か気がかりなことがあるんじゃないですか? お金絡みのことで」 「お金?」  由梨は樫山を見つめる。すでに時間切れの由梨の心は見えない。 「このタロットを読み解くとそうなります。財産や愛を失う危険があると」 「はー、財産ねぇ。やっぱマスターはすごい。それ、きっと当たってるよ」  由梨はそう言って、自ら話し出す。 「なんかね、起業するからお金を貸して欲しいって彼に言われて」
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