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3.小さな夜の贈りもの
「……る、夜!」
僕の名前を呼ぶ声が聞こえて、そっと瞼を押し上げる。
視界に飛び込んできたのは、顔をくしゃくしゃに歪めた伯母だった。
「……おば、さん?」
「夜!あぁ、よかった!」
伯母が早口で何か言い、慌てて携帯を取り出す。ぼんやりとその様子を眺めながら、何があったのか思い出してみる。
ギラつく陽光、悪意に満ちた笑い声、温かい手、柑橘系の匂い、……抱擁。
「母さんっ!」
飛び起きた瞬間、ズキンと頭が痛む。再び倒れこむと土と草の匂いがした。
伯母がどこかに電話をかけ終えた伯母が、優しく僕の頬に触れた。瞬間、高校生の母さんと姿が重なる。
「救急車を呼んだわ。きっと熱中症で倒れたのね。にしても、どうして駅から離れたこんな空き地にいたの?警察に捜索願を出しても全然見つからなくて……本当に心配したわ」
耳を疑った。
伯母はこんな時に冗談を言うようなひとではない。かと言って、嘘をついているようにも見えない。
「あ、あの。伯母さん」
「どこか痛い?苦しいの?」
「そうじゃなくて。……もしかして、心配してくれたの?」
伯母は虚を突かれたようだったが、次の瞬間、怒りの形相でカッと目を見開いた。
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