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「馬鹿言わないで!当たり前でしょ!あなたは小夜子の産んだ子だけど、もう私の息子でもあるのよ。ここで倒れているのを見つけた時なんか、心臓が止まるかと思ったわ!」
僕は伯母をまじまじと見つめた。
もう日も沈み、薄暗くてわかりにくい。それでも、普段はきっちりまとめられている伯母の髪が乱れ放題で、大量の汗でブラウスやスカートが変色していることはわかった。
僕が倒れたのがいつなのかはわからない。もしかしたら、朝からずっと探してくれていたのだろうか。
「迷惑かけてごめんなさい。……ありがとう」
伯母は何も答えなかったが、僕の頭を撫でてくれた。汗ばみ、荒れた、血の通った熱い手のひら。伯母の手は母さんのとは全然違うけれど、同じくらい優しい。
「……初めて撫でてもらった気がする」
「そう、かしら。嫌ならやめるわ」
「ううん。気持ちいい」
「そう。……誕生日おめでとう、夜」
不愛想な声に何だか泣きたくなった。溢れそうになる涙を抑えようと空を仰ぎ、息を飲む。
真っ黒な空いっぱいに、星が浮かんでいた。大きい星、小さい星。数えきれないほどたくさんの光が、優しくまたたいている。まるで、星の平野だ。
夜って、こんなに綺麗で、明るかったっけ。
温かい涙が溢れ出す。視界が滲んで、ぼやけて。それでも、遥かむこうの光は消えない。
ありがとう、母さん。今までもらった中で、最高のプレゼントだよ。
約束、ちゃんと守るから。
「ハッピーバスデー、僕」
穏やかにきらめく星の一つに手を伸ばし、そっと微笑んだ。
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