3.小さな夜の贈りもの

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「馬鹿言わないで!当たり前でしょ!あなたは小夜子の産んだ子だけど、もう私の息子でもあるのよ。ここで倒れているのを見つけた時なんか、心臓が止まるかと思ったわ!」  僕は伯母をまじまじと見つめた。  もう日も沈み、薄暗くてわかりにくい。それでも、普段はきっちりまとめられている伯母の髪が乱れ放題で、大量の汗でブラウスやスカートが変色していることはわかった。  僕が倒れたのがいつなのかはわからない。もしかしたら、朝からずっと探してくれていたのだろうか。 「迷惑かけてごめんなさい。……ありがとう」  伯母は何も答えなかったが、僕の頭を撫でてくれた。汗ばみ、荒れた、血の通った熱い手のひら。伯母の手は母さんのとは全然違うけれど、同じくらい優しい。 「……初めて撫でてもらった気がする」 「そう、かしら。嫌ならやめるわ」 「ううん。気持ちいい」 「そう。……誕生日おめでとう、夜」  不愛想な声に何だか泣きたくなった。溢れそうになる涙を抑えようと空を仰ぎ、息を飲む。  真っ黒な空いっぱいに、星が浮かんでいた。大きい星、小さい星。数えきれないほどたくさんの光が、優しくまたたいている。まるで、星の平野だ。  夜って、こんなに綺麗で、明るかったっけ。  温かい涙が溢れ出す。視界が滲んで、ぼやけて。それでも、遥かむこうの光は消えない。  ありがとう、母さん。今までもらった中で、最高のプレゼントだよ。  約束、ちゃんと守るから。 「ハッピーバスデー、僕」  穏やかにきらめく星の一つに手を伸ばし、そっと微笑んだ。
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