2.愛と夢の部屋

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「とにかく、気をつけてね?奴らは隙を見せるとすぐ寄ってくるんだから。夜くん、引き寄せやすいわりに撃退が苦手そう。心配だなぁ」 「はは……。ところで、サヨさんは一人暮らしなんですよね?」 「そうだよー?」  それとなく話を逸らす。本当はこのタイミングで出ていくべきだったのだろうけど、どうにも腰が重い。先程の悪霊のせいだろうか。 「一人暮らしって、もっと殺風景か、もしくは雑然とした部屋を想像していたので……失礼だったらすみません」 「一人暮らしっぽくないってこと?」 「ま、まぁ」 「それはそうね。だって、本当は二人だもの」  サヨさんはふっと唇をほころばせ、穏やかに微笑んだ。手をそっとお腹に置き、慈愛に眼差しを注ぐ。 「私、子供ができたの」 「……えっ!?」  ギョッとして、頭のてっぺんから爪先まで眺め回し、慌てふためく。 「こここ子供ぉっ!?さ、サヨさん、高校生ですよね!?」 「うん」 「うん、じゃなくて!」 「この子のお父さんは彼氏なんだけど、産むかおろすかで喧嘩した挙句、最近別れちゃったんだよね。てへっ」 「ええええっ」 「一人暮らしなのも、妊娠してること言って家族に追い出されたからなんだよねぇ。いやぁ、ドラマとかではありがちだけど、実際に自分の身に起こると笑える!」 「いやいやいや笑えないから!」  思わず立ちあがって叫ぶと、サヨさんは朗らかに笑った。  軽いノリで喋っているが、明らかにやばい。高校生の母親だの、恋人と別れただの、追い出されただの、どこから突っ込んでいいのやら。  止めようと口を開き、 「だから、この部屋は私とこの子の部屋。産まれてくる子が安心して暮らせるように、ちょっとずつ準備してるんだ」  幸せそうな顔で告げられ、言葉を失った。
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