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「私の夜。かわいい子。私と同じように霊感が強いことは、産まれてすぐにわかったわ。けど、『夜』を嫌わないで」
「……サヨ、さん」
「私は『小さな夜の子』だから。一緒にいられなくても、あなたの中にいるのよ」
星野小夜子。僕の母親の名前。
ひくりと喉が引きつった。たった四文字が口から出てこない。
夜、と優しく呼びかけられる。
「私と約束しましょう。私はずっとあなたを見守っているわ。だから、もう二度と、産まれたくなかったなんて言ってはダメよ?」
「……ッ、かあ、……さ、ん」
「十七歳の誕生日、おめでとう。あなたと話せて、よかった」
さぁ、もう行きなさい。
トンと背中を押される感覚を最後に、意識は遠退いていった。
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