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第二章 八百万孤児院
2ー1
『八百万・シン』、それが僕の名前だ。
八百万というのはここからずっと東の方にある『ジパング』という国の言葉らしいのだが、あまり深い意味は誰も知らないし、誰も知ろうとも思わない。
何故なら僕達兄弟姉妹は、この孤児院の院長であり、僕達を助けてくれた恩人であり、『父さん』でもある『八百万・ハジメ』先生を全面的に信頼しているからだ。
父さんが付けてくれたこの名前は僕達にとって、命よりも大切な物だ。故に、例えそれが悪い意味の言葉であったとしても、僕達はこの名前を嫌いになったりなんかしない。意味なんて関係無いんだ。
僕達はこの孤児院に入るまでは、名前なんて無かったのだからーーーーー。
この世界『パラトリアス』には剣術や魔法のような力とは別に、数は少ないが『神の異能力』という物がある。そして、その『神の異能力』を持つ人間は『神の能力者』と呼ばれ、この世に生を受けた時からその証として、胸に神の文字が刻印されている。
文字自体は読めないのだが、神の能力者が刻印に触れると自然に能力の名前や性質、使い方迄も分かるようになる。
まるで、選ばれし者。という印象を持たれやすいが、
僕達にとっては呪いのような物だ。
そう、僕達は全員、『神の能力者』だ。
そして、神の能力者の人生という物は酷く残酷な物なのだ。
まず、始めに、両親は否が応にも子供を売る羽目になる。神の能力者は貴重な戦力として、国の軍部で全て管理される事になっているのだ。中には大金をせしめ、喜んで子供を売る外道もいる。
その場合、軍では能力名が自分の名前になり、一生戦争の道具として生きる事になる。
対して、神の能力者である事を隠し、普通の子供として育てようとする親も勿論いる。
だが、人間とは欲深な生き物でどこかから情報は必ず漏れ、よくて軍部へ、最悪は人拐いに会う羽目に。
名前なんて、付けてくれていたのかも分からない。
両親の顔など、思い出せる筈も無い。
僕達はそれぞれ酷く悲しい過去を持っているが、それは互いに尋ねないし、口にはしない。
辛く、苦しい思いをしたが、僕達はこうして父さんと出会えたのだから。ーーーー
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