第一章 始まりの善人達

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第一章 始まりの善人達

1ー1 時計の町『ベルクロック』。 町の中心にある大きな時計塔から名付けられたこの町は割りと大きめの町なのだが、その割には時計塔以外に目ぼしい名所は無く、名産品もこれといって無い。 言ってしまえばちょっと変わった広い田舎町だ。ちょっと変わった・・・ね。 時計塔の屋上、町全体を見渡せる本来立ち入り禁止の場所に二人の少年少女がいた。 一人の茶髪の少年は右手で頭を押さえ、 一人の長い黒髪の少女は目を閉じて座り込み、町の地図に指を当て、道をなぞるように動かしている。 少年は少女の指を見つめていると、フッ、と小さく笑い、目を閉じる。 『ーーー、目標、サジおばさんの家の角を曲がり正門方面へ向けて移動中、『ココロ』、『ホシ』挟み撃ちして足止めを、『ユメ』はそこから現場に向かって二人と合流。あそこは一本道だ。ここで捕まえるよ。』 『あいよ!』 『了解っす!』 『うん・・。』 頭に直接響いてくる声に少年は満足気に頷き、 隣に座り込んでいる少女の肩を揺する。 「『ミコト』お疲れ様、もういいよ。」 「ん、・・・何?もう終わったの?」 ミコトと呼ばれた少女はゆっくりと目を開き、立ち上がって膝を払いながら少年に訪ねる。 「もう詰みだよ。大抵の奴は『ミカド』の罠に掛かって自滅。最後の一人もココロとホシの二人係りで追い込んであるし、ユメも向かわせた。」 「うわ、その人可哀想・・・。まぁ自業自得よね。」 ミコトは広げた地図をクルクルと巻き、紐で縛ると、呆れたような声で呟く。少年は少女が準備出来たのを確認するとコクリと頷く。 「だね・・・。さてっ、『ヤミ』に連絡して僕達も行こう。ミカドの罠に掛かった奴らを回収しなくちゃあね。」 茶髪の少年は再び右手を頭にあて目を閉じ、念じる。 「そうね、力仕事はしたくないけど、私も一発くらい殴らないと気がすまないし。」 「ははッ、怖い怖い。女の子の言うセリフじゃないよ。ーーーーーーさて、」  連絡を終えた少年、『シン』はゆっくり目を開き、ニヤリと怪しく笑う。 「僕達の家族に手を出した悪人共に目に物見せてやるとしようか。」
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