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天国と地獄
目を覚ますと二匹の犬が俺の顔を覗き込んでいた。
大きめの犬と小さな犬……おそらく、チワワと柴犬だった。人に慣れているのか、尻尾を激しく振って顔をなめてくる。先程から頬を何かになでられている感じがしていたが、犬たちになめられていたのだろうか。
上体を起こし、あたりを見回すと、無数の花に俺は囲まれていた。どうやら俺は花畑の中で眠っていたようだった。
なぜ俺はこんなところで寝ていたのだろう?
まったく記憶にない。
それ以前にここはどこなのだろう……?
「やあ、目が覚めたようだね」
男の声がした。声は低いがやさしい口調だった。
声の方へ目をやると、男女が並んで立っていた。歳は40前後だろうか。
二人とも細身で、白を基調とした揃いの服装だった。
犬たちは尻尾を振りながらふたりの方へ向かった。ふたりの飼い犬なのだろうか?
「ここはどこなんですか? あなたたちは?」
当然の質問だったが、男女は答えてくれなかった。
「もう少ししたらわかるよ。最初は誰でもうまく思い出せないのさ。さあ、いらっしゃい」
俺は怪訝に思いながらも、ふたりについていった。
不案内な場所にいる以上、ついていくしかなかった。
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