秘密の香り

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「やっぱり今日はちょっと寒いね」   そう言って震えた私の体を、今度は真紀が抱きしめる。 今の私には、なによりも彼女の体が離れることが怖かった。   閉演時間が過ぎても鳴りやまない遊園地のBGMを聞きながら目を閉じる。 今日はとても疲れた。 それでも、心はとても満たされている。 まるで夢の中にでもいる気持ちになりながら、私は薄暗い景色をかき消すような鮮やかな世界を思い浮かべた。   夢の世界ではラベンダー色のカーディガンを着た真紀が、メリーゴーランドに乗って私に手を振っていた。
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