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「あいつのこと、やっぱり殺しておけばよかったかな?」
ぽつりと真紀はつぶやいた。冗談とも本気とも取れない小さな声だ。
「次に会った時にすればいいよ」
「うそだよ、冗談」
「じゃあ、私が殺してあげる」
真紀にできないのなら、私がやってやる。
冗談だと泣きそうな顔で笑った彼女を慰めるために、とっさに私は口走っていた。
「約束だよ」
「指切りする?」
小指を差し出すが、真紀は首を横に振る。
「……しない。意味ないもん」
私が約束を果たせないと思っているのだろうか。
「約束破られるのは嫌い。冗談も嫌いだから」
そういえば、めぐみさんが彼女は嘘を見抜くのが上手いと言っていた。
彼女たちの間には、深い溝というよりも亀裂があるように思えた。
大切に作り上げたものを切断したような、取り返しのつかない亀裂だ。
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