秘密の香り

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「カーディガン、やっぱり貰ってもいい?」   返すつもりだったカーディガンの袖に、頬をすりつける。 柔らかい毛糸から、かすかにイチゴの香りがした。 「それはあげたものだって言ったでしょ」   少し肌寒い風に首をすくめ、私たちは身を寄せるようにくっつく。 「おそろいだね」 「双子みたいだよね、私たち」   うつむくと、薄暗くても分かるラベンダー色に目に留まる。 毛糸がふれあい、色が絡まり、どこからがどちらのカーディガンか分からない。 「――私ね、ずっと香菜のことが気になってたの」   真紀は私の肩口に頭をすりつける。吐息交じりの声は少し眠たそうだ。
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