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疑問を投げかける視線に気づいたのか、真紀は私の腕を握ったまま答える。
「香菜は私のこと好きになってくれると思ったんだ」
単純だが、彼女は愛を求めていたのかもしれない。
本当はいない母親の話は、愛されたかった彼女の願望だ。
暴力的な父親と家を出て行った母親。
なによりも、彼女は自分に愛してほしかったのかもしれない。
夏でも冷たい心を隠すようにカーディガンを着こみ、真紀は笑顔で偽りの自分を作り上げていた。
愛されていない自分が嫌いで、真紀は嘘をついたのだろう。
それでも、彼女は愛されたかった。
他でもない、自分自身に佐藤真紀という人間を愛してほしかったのだ。
だからこそ、私は真紀そっくりに変えられた。
真紀の代わりに真紀のことを愛する身代わりに私は選ばれた。
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