秘密の香り

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私がこのカーディガンを着ている意味がようやく分かった。 すべては、彼女を温めるためだ。 真紀が嫌った真紀になり、彼女を抱きしめて愛するためだ。 「私、香菜に好きになって欲しかった」 「好きだよ」   きっと私は彼女が計画を企てるより前から、彼女のことが好きだった。 彼女が私をどう思っていても、嫌いになど慣れないと思う。 「私が愛してあげる」   彼女が求める愛を、私がすべて引き受けよう。 自分に愛されなかった彼女の代わりに、私が彼女の代わりになる。   そうすれば、真紀は私から離れて行かないはずだ。 「約束する?」 「いくらでもするよ」 「破ったらひどいよ?」 「破らないから心配ない」   指切りなどしなくても彼女の約束に私は縛られている。
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