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なんだか切なくて唇を噛みしめると、リップクリームのイチゴの香りが口に広がった。
きっとこの秘密の香りが、彼女と私を繋げたのだ。
まだ彼女と離れたくない。
真紀の唇には、私と同じリップクリームが綺麗に塗られている。
つなぎ合わせるように、私は彼女の唇に自分のそれを押し付けた。
薄く塗ったリップクリームが合わさり、イチゴの香りが一層濃くなる。
こうしていると、彼女と一つになれた気がして心が満たされていく。
真紀から顔を話すと、私たちの間に冷たい風が通り抜けた。
そういえば、親友とも約束を交わしていた。
あの約束は果たせそうにない。
「――明後日の次の日の次の日は、あんぱんを買いに行こう」
「あんぱん?」
首を傾げた真紀の唇を、人差し指で拭う。
手を汚したピンクのそれは、どちらのものか分からない。
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