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「そのカーディガンいいねって、言ったの。そしたら佐藤さんがね、いいよ、あげるよって。新しいカーディガン買ったみたいで処分したかったんだって」
女王の慈悲をたまたま平民が受けただけなのだと説明するが、こんな嘘くさい話を聞いても親友が納得してくれるわけもない。
まだ何かを隠していると彼女は気づいているだろうが、私がこれ以上なにも話さないことにも気づいている。
「本当にいじめられてるわけじゃないんだね? なにかあったら私たちに言うんだよ」
「ありがとう、朋ちゃん」
今回のところは深く問いただすことは止めたようだ。
朋ちゃんは私の頭を撫で、不服気にため息を吐く。
「お前ら、早く教室に入れよ」
話がまとまったところでチャイムが鳴り、担任の教師に声をかけられた。
私たちは二人して教室へ戻る。
一斉にこちらへ向いた視線には、好奇のまなざしが今も混じっていた。
それに気づきながらも、私は教室の一番奥に座る佐藤真紀の顔を見ることができなかった。
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