23人が本棚に入れています
本棚に追加
こんなに楽しくない昼食は、高校生活で初めてのことだ。
早く食べ終わり、さっさとここを離れたい。
「香菜ちゃんのお弁当おいしそうだね。香菜ちゃんの手作り?」
佐藤真紀に弁当をのぞき込まれ、弁当箱に伸ばしかけた箸が止まる。
「ううん、お母さんだよ」
「へえ、いいお母さんだね」
なぜ、彼女は平然と私に話しかけられるのだ。
無理やり私と友人を引き離しておいて、なにも感じないのだろうか。
今頃、食堂では朋ちゃんが私のことを友人たちに話しているころだ。
佐藤真紀について行った裏切り者のことを友人たちが、どう思っているのか気になって仕方がない。
それでも、今は表面上だけでも楽しく食事をしなければならない。
佐藤真紀の小さなピンク色のお弁当箱をのぞき込み、無理やりに口角をあげて笑ったふりをする。
最初のコメントを投稿しよう!