憧れ色に濡れた唇

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このまま毎日、なし崩しに彼女とランチを過ごすことになるなど嫌だ。 今日だけならまだしも、友人たちになんと説明すればいいのだ。 私の不安をよそに、佐藤真紀は弁当箱のふたをして鞄からポーチを出した。 「そうだ、このリップあげる」   彼女が取り出したのは、あの時私が唇に塗ったピンク色のリップクリームだった。 「これって、佐藤さんの」 「私とおそろい」   よく見ると新品のようだ。 金色のふたと花柄の模様の可愛いそれに、ずっと憧れていた。 受け取りたいのはやまやまだが、そういうわけにもいかない。   どうしたものかと戸惑っていると、佐藤真紀はリップクリームのふたを開けた。 「ほら、これで返せない」   気付くと、唇にしっとりとした感触が滑り、鼻先をイチゴの香りが通り抜けた。
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