憧れ色に濡れた唇

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髪を梳かれるたびに、首筋がくすぐったくて背中に弱い電気でも流れているみたいだ。   彼女はきっと母親にこうして髪を梳いてもらうのだろう。 優しい手つきは愛を受けて育ったことを表しているようだ。 もしかしたら、本当に彼女は私と友達関係を築こうとしているだけかもしれない。 そんな勘違いをしそうになるほど、私の髪に触れる真紀の手からは悪を感じなかった。   温かな日差しの下で髪に触れられていると、つい眠気が襲ってくる。 うとうとと舟をこぎ始めていると、眼鏡に触れる気配がして目を開く。 「香菜は絶対、眼鏡ない方が可愛いよ。それから、髪は右に分けた方が絶対似合うと思う。ほら、こうしたら私とおそろい」   真紀に渡された手鏡を受け取り、自分の顔を映す。
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