憧れ色に濡れた唇

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逆立ちしてもなれない彼女を、ずっと陰から見ていた。 こうして構ってもらえたことを心の奥底で喜んでいるのかもしれない。 気まぐれでも憧れていた彼女が自分と似ているなどと言い、髪を解いてくれた。 浮かれるには十分すぎる出来事で、夢でも見ているようだ。   彼女は私を騙そうとしていると思っていたが、勘違いなのかもしれない。   不器用な始め方だが、本当に真紀は私と仲良くなりたいだけかもしれない。 そんな考えはバカバカしいだろうか。 「次の日曜日に一緒に買いに行ってあげる。そのあと、服も選んであげる」 「いいの?」 「いいもなにも、私がそうしてあげたいの」   彼女につられて緩みそうになる頬を、唇を噛んで引き締める。
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