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憧れ色に濡れた唇
校舎を出たのは、誰にも佐藤真紀と一緒にいる姿を見られたくなかったからだ。
親友を裏切った自分をいっそのこと、消し去ってしまいたかった。
うつむいたまま佐藤真紀を引き連れ、たどり着いたのは体育館の裏だ。
辺りには誰もいない。
近くの食堂から漂ってくる匂いに友人たちを思い出しながら、冷たいコンクリートに腰を下ろした。
並んで座った佐藤真紀が膝に弁当箱をのせ、私の方を見た。
「食べようか」
命じられるがままに、自分の弁当箱を広げて食事を開始する。
「いただきます……」
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