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「知ってたか? 父さん、刑事とか警察ドラマが好きだった。『太陽にほえろ!』『西部警察』『私鉄沿線97分署』『あぶない刑事』に『古畑任三郎』。『踊る捜査線』『はぐれ刑事』に『相棒』――」
「ちょ、ちょっと待って。初耳なんだけど!」
兄貴は眼下に広がる景色に目を向けた。
「だから……おまえが警察官になった時も、刑事課に配属されたって聞いた時も、嬉しそうだった。やっぱり俺の子だ、なんて言ってさ」
「なんだよ、それ……」
俺は愕然とした。それならもっと早く、親父と仲直りする機会を持てばよかった。俺自身も仕事も嫌われていると思っていたのだ。
今更言っても、もう遅い。――だから。
「兄貴。約束するよ。このヤマ、絶対に解決して、あの女を逮捕する」
「――山の日に 山で誓った ヤマ解決。字余り」
生真面目な兄が詠んだ下手な俳句に、俺はふっと肩の力を抜いた。 (終)
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