155人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
ヤシンと向き合って椅子に座り、ヤシンの用意した朝食を食べていた。
ヤシンは先に食べ終わり、笑みを浮かべながら俺の食べる姿を見ている。
すごく食べにくい……。
「あの、そんなに見られると食べにくいのだが…」
「恋人になったカバネさんが、全てかわいくて愛おしいと思いまして」
俺はパンを喉に詰まらせて、慌てて水をぐびぐびと飲んだ。
「お前な、こんなオッサンつかまえて、かわいいとか言うな。それに、その、こっ恋人って、本当に俺でいいのか?お前なら彼女くらいすぐに作れるだろうに」
「僕はカバネさんじゃないと嫌なんです。カバネさんこそいいんですか?生まれて初めての恋人が僕のような男で」
ヤシンはからかうように、ニヤニヤと笑っていた。
「いいから、あ、あああんなことさせるんだろうがっ!お前以外にあああんなのされたくないし!それに、お前と一緒にいたいんだ」
顔がまた耳まで真っ赤なっていくのが、自分でも分かった。
「僕があの村を支配した暁には、あなたを村に連れ帰って、僕だけの目にしか触れない場所に閉じ込めて、一生愛して、可愛がってあげます」
「いや、閉じ込められるのはちょっと…」
「…もう逃がしませんからね」
「ちょっと、ヤシン、俺の話をだな…」
「さーてと、僕はこの辺で帰りますね!色々と仕事を中断してきてしまったし。足に貼る薬とか包帯とか、そこの袋にまとめてありますから、無茶しないで治すことに専念してくださいね」
ヤシンは立ち上がり、いつまとめたのか、既に綺麗にまとめられた荷物を手にして、ドアに手をかけた。
「また仕事の合間に来ますね………これ以上いると帰れなくなる……」
最後の言葉は小さすぎて聞こえなかったけども、また来ると言われて、俺はなんだか安心した。
呆気なく帰られて少し寂しくはあったけれども。
はれて俺とヤシンは恋人同士になったのだから!
最初のコメントを投稿しよう!