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スピーカーからのジジジッという音で我に返った。
また昔のカバネさんの事を思い出して、ぼーっとしてしまった。
「おーい、おーい。なぁ、これに何か仕掛けがあるんだよな?これってお前に聞こえてるんだよな?」
スピーカーから、様子を伺うようなカバネさんの声が流れてきた。
ビックリした!
だけど、いい加減、あの鈍感ドジっ子なカバネさんでも気づく頃か…。なんだろう?今更だけど、盗聴器や発信機付けたこと、しかも大切な剣に仕掛けたことでも文句言ってくるのだろうか?
それなら面と向かって言ってきそうではあるけど。
「あ、あのさ、お前って最近仕事忙しいの?あ!俺の今いる場所が村から遠すぎるからか?!そっか、そうだよな、ここ遠いよな…。」
「?」
どうしたんだろう?何か僕に用があるのだろうか…。
「……ヤシンに、会いたい」
「!!!!!」
「うわっ、俺何言ってんの!!!!!今のなし!なしでお願いします!じゃあな!」
スピーカーからは、剣から遠ざかっていく足音だけが聞こえていた。
僕は素早く鼻を手で押さえた。指の間を赤いものがツーっと流れ出た。
片手でティッシュを取り、鼻に当てがい、洗面所に急行し、手やら顔やらを洗い、とりあえず鼻にティッシュをぶっ刺した。
手帳を開いてスケジュールを確認、変更に変更を重ねて、カバネさんのいる所まで行く予定をねじ込んだ。
「あなたが僕を求めてくれるのならば、何があっても行きますよ!!!!!」
いそいそと鞄に荷物を詰め込んで
あ!この前手に入れたオモチャを持っていこうかな?それとも拘束具とか…。いやいやでも、まだ数もこなしてないのに、いきなりこんなの使ったら怖がらせちゃうだろうなぁ…。
でも、これで、あんな風にあんなになってしまうカバネさん………見たいなぁ。
遠い街の空の下、カバネの悪寒が治まることはなかった…。
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