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碧馬を嬲っていた男たちが動きを止めた。
体を起こして何か説明している。
男にさえぎられて、声の主の姿は見えない。
え、いま日本語だった?
「迷い子を無理やり連れ去るのは禁止されているはずだな? その子はどこの部族だ?」
「※※※、※※※※※、※※」
二人が代わる代わる何か話しているが、碧馬は必死に身をよじって体を起こして叫んだ。
「俺、こいつらに無理やり連れて行かれそうなんです」
ちっと舌打ちした男がまた頬を叩こうとしたが、さっと伸びてきた手がそれを阻んだ。
「もうやめろ。これ以上やったら俺がお前たちを拘束する」
「※※、※※※」
「この子は嫌がっている。お前たちの処分は後で沙汰があるだろう」
男二人はしぶしぶ碧馬から身をひいた。
手の主の全身が目に入って、碧馬は今度こそ気を失いそうになる。
そこには不思議な生き物がいた。
下半身は馬で、上半身は人だった。この姿は知っている。絵本や映画の中に出てきた。だけど伝説の生き物だ。現実にはいないはずの生き物だ。
ケンタウルス、そう神話の中で呼ばれている。
ブルーとシルバーの混ざったような色合いの長い髪に、明るいグリーンの瞳が煌めいている。
こんな美しい生き物を見たことがなくて、碧馬はぽかんと彼を眺めていた。
彼の瞳が何か考え込むような色をたたえて、じっと碧馬を見つめている。
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