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「ええと…。たぶん、俺は異世界に飛ばされたんだと、思うんです、けど…」
自分が口にした台詞の突拍子のなさに自分でも怯んでしまうが、相手は、ふむと考え込んだ。そして碧馬の全身にさっと視線を走らせた。
自分がほとんど全裸なことを思い出して、カーッと頬が熱くなった。
靴下と上履きだけの間抜けな格好で森の中に立っているのだ。
裂かれた衣類はもう着られる状態ではなく、どうしようかと焦っていたら、少し後ろに学ランが落ちているのが見えた。
その視線に気づいた彼がさっさとそれを取りに行って、肩から掛けてくれた。かろうじてお尻くらいまでは隠れる。
「ひとまず、落ち着ける場所に行こうか」
「あの、あなたは誰ですか?」
「ああ、悪い。自己紹介もしていなかったな。俺はリュカだ。この森の自警団をしている」
自警団が何をする組織かわからないものの、悪い人ではなさそうだと碧馬はリュカを見上げた。
「俺は井ノ又碧馬です」
「イノマタアオバか。とりあえず背中に乗れ」
「え、でも…」
「足を痛めているんだろう? 歩くのはよくない」
下着もつけていないのに人(?)の背中にのっていいものかと迷って、碧馬は裂かれたシャツを拾い上げて腰に巻きつける。
それからおそるおそる背中に乗る碧馬を、リュカは面白そうに見ていた。腰に手を回すと、リュカの肩にきれいな馬のタトゥーが浮かんでいるのが見えた。
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