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「ここでは誰も知らない。大きな街に行けば知っている者もいるかもしれない」
「誰に訊けばわかりますか?」
「そうだな…。神殿の神官かあるいは魔道士、呪術師…。いずれにしても滅多なことでは会えないな」
ここは獣人たちが多く住む辺境地で人族の少ないエリアらしい。
彼らの言う街までは馬でも20日はかかるという。最速の天馬なら2日で行けるというが、天馬の知り合いなどいない。
そして街まで行けたとしても、何のつてもない碧馬がそんな人に会うためにはどこでどんな手続きをすればいいかもわからない。
途方に暮れて、碧馬はぼんやり椅子に座りこんだままだ。
その間に大人たちの間で会話が交わされ、リュカが優しい目をして言った。
「ひとまず、イノマタアオバの身柄は自警団で預かることになった。言葉も通じないし、外で暮らしていくのは無理だろう。獣人たちの中には気が荒いものもいるし」
その言葉で熊の男たちに乱暴されかけたことを思い出す。
思い出すと恐ろしくて身が竦んだ。
ここは安全なんだろうか?
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