6 ,本当のこと。

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そして数日後、精密検査の結果が出て、両親が説明のため呼び出された。 本当は気づいていた。ただの睡眠不足ではない。けれど心配はかけたくなかった。できるだけ笑顔でいた。 帰ってきた両親の顔は複雑で、一瞬で全てを察した。 「もう、長くないの?」 笑顔を作った。 「大丈夫、きっと方法はあるから、きっと、まだ、」 涙をこらえている母の顔に胸が締め付けられた。 父から話を聞くと、心臓がどんどん機能しなくなっており、もう1年生きられるかわからないと言われたらしい。 死ぬって、死にたいって、なんだろう。まだやりたい事が山程ある。死ぬのが、怖い。 「だったら、最後くらい楽しくやりたいことやりたい。」 両親と医師の承諾を得て、最後の1年やりたい事をした。 チャラチャラしてみた。やり過ぎで退学になった。 定期検診をサボった。医者と親に怒鳴られた。 学校を変えた。真面目に生きてみた。 つまらなかった。何をしても空っぽだった。 気がつくと屋上にいた。あぁ、そうか、死にたいってこの事か。心が軽くなった。足を踏み出そうとした瞬間に ドアが空き、女の子が入ってきた。なぜか、駄目だと止められた気がした。 可愛らしい華奢な女の子。キラキラしている目。 俺もこの子みたいに楽しい人生だったらなと羨ましく思った。     
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