1人が本棚に入れています
本棚に追加
7,最後の日のこと。
もう十分だった。幸せすぎた。
早く、早く彼女のところに。
苦しい胸を手で押しつぶして、走って待ち合わせ場所まで行った。
「遅いよー!どうしたのー!」
本当にごめん!と思いっきり手を合わせた。
そして花を渡した。
「分かってますねぇ~、許しちゃいますよ。そんな事されたらー!」
彼女の口から出る声も言葉さえも愛おしくて、その時だけは、ポエマーになれそうだった。
これが最後のデートかななんて考えながらも症状を忘れる程に楽しかった。
でも、最後はすぐにやってきた。
せめてデートは最後までやりきりたかったなー。
最愛の彼女の前で、最後を遂げた。
今思えば、これ以上に幸せな死に方はあるだろうか。
半分もない意識の中、思う事は両親への感謝と、彼女に俺を忘れて幸せになってほしいという願いだけだった。
辛いだろうな、どのくらい愛してくれてたかな。
幸せだったな。彼女も幸せでいてくれたかな。
悔しいな。
最後まで俺だけが一番愛してる人でいたかったなー。
何か彼女に残せたかな。日記は読んでくれたかな。
考えつくことは全て彼女の事で。最後には死ぬのが怖くなかった。彼女の笑顔を最後に死ねたなら、もう他に何もいらなかった。
最初のコメントを投稿しよう!