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8, 猫と主人の事。
それから半年もしないある冬、とある狭い一室の猫とその主人は、もう互いに長くないであろう人生を二人で幸せに暮らしていた。
私は結局、自宅で最期を迎える事を選んだわけだけれど、この猫はヨボヨボなくせに随分と元気だ。
朝から餌をねだって起こしに来る。
けれどそれが、私を安心させた。
寝てしまえば、もうそのまま起きられない気がする。
正直、怖かった。いつ死ぬかわからない恐怖が襲ってきて、あの時屋上にいた彼の気持ちが少しだけわかった。
どんどんベッドから起き上がれなくなった。
ダルくて、だんだん意識が遠退くような気がした。
猫はずっと隣にいる。また、このヨボヨボは淡々と人の心配なんてして、気を遣っている。
そうか、もう長くない。
寂しくただ死ぬのもイヤだし、
それじゃあ最期に、この猫に話でもしてやろう。
ずっと秘密にしていたことを。
「あのね、シー君、」
俺は、今はもう、ただの猫でしかないが、彼女の最期くらいちゃんと看取ってやろうとベッドに近づいた。
「ニャー(何)」
彼女は、返事してくれるのね、いい子、って笑ってくれた。向日葵みたいだ。
「 ずっと、怖かったの。
私を愛してくれる人は皆いなくなった。
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