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大事な人が、最愛の人がこの世から誰もいなくなる怖さを知ってる。
けど、酷いけど、自分が死ぬのが一番怖いって今思うよ。まだまだ若いのになぁ!ピチピチしてるのに!
本当は、好きな人ができて、結婚して、子供も産んで、一緒に暮らして、孫が可愛いとか言って、幸せに長生きしたかった。」
彼女の瞳から涙がポロポロ零れ落ちてきた。それでもしっかりと、話を続けた。
「でもさぁ、いなかった。あの人以上に愛せる人なんて、あの人を忘れて次の恋なんて、無理だった。」
やっぱり、彼女は俺のせいで深く傷を負っていた。
泣きながらも、笑顔を作って話す彼女を見るのは、心が痛かった。
「それでも、シー君がこの家に来てくれて、それと同時に幸せを運んできてくれた。
寂しさなんてどっかに行ったし、未婚女性が猫にすがるなんて惨めかもしれないけど、心の支えだった。」
ありがとう。
そう俺に言い聞かせていた彼女の瞼はどんどん重くなっているのが分かった。
最後を看取るのはこんなに辛いのか。
精一杯想いを伝えたかったが、声は出ない。代わりに出るのは、半分かすれた猫の声だった。
俺が支えてもらっていたようなものだ。
ずっと、愛をもらっていた。
ずっと、追いかけるしかできなかった。
声もかけられない。慰められない。
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