1, 主人のこと。

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私は、この主人の隣りに居てもう五年になる。 この主人は、ズボラなところがあるからか、女性としての可愛げがないからか、彼氏を連れてきた事など無かった。 更にこの主人は、猫アレルギーなのだ。全く、変わっている。 では、私と主人がどう出会ったか話そう。 あれは雨の日だった。 気がつくと私は路上で雨に晒されていて、車通りが少ない道であったから幸い、いや、不幸であった。 数少ない通行人の中に、連れて帰ってくれる人はいなかった。 もう1ヶ月が経とうとしていた頃、とうとう思い立って私はその付近から離れる事にした。 すると、公園に泣いている女性を見つけた。 私は猫ながらに頭が良かったので、近寄って弱っている間に媚びる事とした。 案の定、上手くいった。女性は私に気がつくと、涙を拭いて笑顔を見せた。 「君も一人なの?私と一緒!」って。 瞬間、何か抑えられていたものがはち切れたように寂しさが込み上げた。 同時に、この人が暗闇から、ドン底から救ってくれるんだと思った。 そうしてもう五年が経っている。 彼女は毎日パソコンと向き合っては頭を抱えて過ごしている。 私にはもう人間はよく分からない。 だけど、この人がたまらなく愛おしく、また、私もそう愛おしく思われているのだろうと日々幸せを感じているのだ。 挨拶でも、ご飯でも、昼寝でも、お風呂でも、そういう毎日のちょっとした断片に、この私の主人を想って、これからも一緒に暮らしていくんだろう。 あぁ、しあわせだにゃぁ~。って。 終わり
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