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2, 猫のこと。
私とこの子が暮らして、もう5年になる。
出会った日、私はとてつもなく絶望の中にいて、死んでしまおう、いやまだだ、でも死んでしまおう、だなんて人生最後の決意を揺らがせていたときだった。
そんなときに、1匹の猫が来て、ゴロゴロ言いながら脚にくっついてきた。
アレルギーもあり、猫を毛嫌いしていた私が、猫を可愛いと思った。
と、同時に、猫を私とつい重ねてしまった。
1人で、ボロボロで、汚くなって、とてつもなく寂しくて。もう何でもよくなった。こんな私にでも、助けを求めている気がした。だから、連れて帰った。
でも、1年足らずで気付いたことがあった。
私はあまりにも猫アレルギーを舐めすぎていた。
どうしょうもなく息ができない日があった。けれどだんだん慣れていった。
私は小説を書いている。夢であった小説家になれたものの、スランプ続き。でもこの子がいると落ち着くことができた。
大概の人間は、猫1つに大袈裟な話だと言うかもしれないが、生涯、これほど愛くるしく、愛おしいと思った生き物がいるだろうか。
それから私は、身を投げようなんて事は思わなくなった。何を気に病んでいたかさえ、忘れてしまえるほどだった。
この猫はどこか懐かしい、涙が出るほどにあたたかいと思う事があった。寂しいだなんて思わなくなった。毎日幸せだった。
日々、どんな場面でも幸せを感じられた。
そうだなぁ、例えば、気がつけば私の膝の上で眠っているあなたを見たときとかね。
終わり
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