5 ,忘れていたこと。

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誰かに死ぬところは見られたくないからと、その人は笑いながらこちらに来て、一緒にお昼ご飯を食べた。 顔が整っていて、優しい、フレンドリーな同級生だった。 その人の話は面白かった。人生に行き詰まっている人には到底思えなかった。 次の日も屋上に行くと、「まいったなぁ」って笑顔でご飯を食べた。 この人を止めなきゃいけないような気がして、毎日早くに屋上に行った。そして、話して、ご飯を食べた。 半年ほど続いた。互いに、そういう感情があることに薄々気づいていた。また、彼がもう自殺志願者でないことも分かっていた。 二人の時間は心地が良くて、そばにいるだけで愛おしくて、互いをわかり合っている気がした。 後に、私達は付き合う事になり、いわゆる青春というものを謳歌していた。 手を繋いだり、抱きしめたり、キスをしたり。 普通の恋人同士だった。相手の一言に惑わされ、一言に嬉しくなり、わくわくが止まらなかった。 もう好きという感情は隠せなかった。 けれど、運命はそううまくは行かなくて。 どこか壁になっていた気がした、タブーだった気がして触れられなかった自殺の理由を聞いた。 彼は病気だった。もう完治は難しく、余命も告げられていた。今はもう、医者に投げ捨てられた状態だった。     
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