4/7
前へ
/11ページ
次へ
 俺は……ここで、死ぬのか?  このまま水も食い物も無く、日に炙られて干からびるのか?  それとも、いずれ再び荒れ出して、海の藻屑と消えるのか?  あるいは、(ふか)の餌になるのか――?  そんなのは、嫌だ。  おゆき……  俺は、おゆきのためにも絶対に生きて戻らなければならない。  約束したのだから。  漆のような艶やかな黒髪に、名にし負う白い肌。黒曜石の瞳、紅の唇。  幸蔵は、おゆきの姿を脳裏に思い描き、青以外の色に浸った。  そして、なによりも、無邪気で汚れを知らぬ清らかな笑顔だ。  まさに泥中の(はちす)。  掃き溜めの鶴。  おゆき……  会いてぇよ、おゆき……
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加