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俺は……ここで、死ぬのか?
このまま水も食い物も無く、日に炙られて干からびるのか?
それとも、いずれ再び荒れ出して、海の藻屑と消えるのか?
あるいは、鱶の餌になるのか――?
そんなのは、嫌だ。
おゆき……
俺は、おゆきのためにも絶対に生きて戻らなければならない。
約束したのだから。
漆のような艶やかな黒髪に、名にし負う白い肌。黒曜石の瞳、紅の唇。
幸蔵は、おゆきの姿を脳裏に思い描き、青以外の色に浸った。
そして、なによりも、無邪気で汚れを知らぬ清らかな笑顔だ。
まさに泥中の蓮。
掃き溜めの鶴。
おゆき……
会いてぇよ、おゆき……
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