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どうしても、蒼の血を吸いたくない。
他の人間の血も、吸いたくない。
そう思った吸血鬼の紅は、とことん血を吸わず。
弱りきってベッドの上で静かに眠っていた。
「……ばか紅。」
蒼は、日に日に弱っていく紅に、血を吸ってほしいと願った。
蒼の血が嫌なら誰の血でもいい、吸ってほしいと。
それすらも拒んだ紅は弱りきり、臥してしまった。
嫌われたって構わない。
もう、愛する人を助けるには、これしかない。
蒼は懐から短刀を取り出した。
自らの手首をすっと切ると、血が静かに溢れ出る。
手首をそのまま、紅の薄く開いた唇に当てる。
血に飢えた紅は、無意識に蒼の手首を引き寄せ、血を舐める。
温かく、甘美な血の味が口の中に広がる。
無我夢中で、紅の舌が流れ出る蒼の血を舐めとっていく。
蒼は、生温かい紅の舌の感触を手首に感じながら、逆の手で優しく紅の目を塞ぐ。
意識を取り戻した紅が、うっかり蒼の顔を見ないように。
愛する人が、壊れてしまわないように。
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