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「……紅?」 目が覚めてしまった蒼は、いつも眠って起きるまでそばにいてくれる紅の名を呼んだ。 いつもならすぐに返ってくる返事はなく。 振り返ると、紅はいなかった。 紅と出会うまでは、倒れるまで眠れなかった蒼。 吸血鬼特有の少しひんやりした肌に身を寄せ、紅に頭を撫でられているといつのまにか眠れた。 蒼にとって眠ることは苦痛でしかなかったが、紅に撫でられながら眠ることで幸せを感じていた。 蒼はベッドの上で膝を抱える。 紅がいないならば、眠らなくても変わらない。 しばらくそうしていると、ドアの開く音がした。 「蒼……目が覚めたのか?」 膝を抱えてベッドの上に座っている蒼を見るや否や駆け寄ってきて、優しく頭を撫でる。 「ひとりにしてごめん。」 その言葉をきっかけに、蒼の目から涙が溢れる。 泣く蒼を、紅はただ抱きしめる。ひとりじゃない、そばにいると伝えるために。 蒼は繊細で、脆い。故に、美しい。 薄いガラス細工のように。 ひび割れてしまう前に、大切にして、守りたい。 いつの間にか腕の中で眠ってしまった蒼をベッドに横たえる。 そのまま逆側に回ってベッドに入ろうと思い立ち上がると、袖を軽く引かれた。 「紅、行っちゃ嫌だ……」 「蒼の隣に、入るだけだよ」 「……わかった」 優しく言い聞かせると、蒼はそっと袖を離した。 紅はすぐに逆側に回り、ベッドに入る。 温かな蒼を優しく抱きしめながら、紅もしばしの休息をとっていた。
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