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6 (紅の独白)
眠る君の寝息を聞いていた。
人間ではない俺に、眠るという概念はないから。
幸せそうに眠る君を、ただ見つめた。
少し苦しげな君の寝息を聞いた。
温かな君の頬を、柔らかな君の髪を、撫でた。
君の眉間の皺が少し和らいだように見えた。
紅、と呼ぶ君の寝言を聞いた。
寝言に返事をしてはいけないと知っていた。
それでもなんとなく、蒼の名を呼び返した。
深夜にふと目覚めた君を見た。
近くに俺がいると気付くと、嬉しそうに微笑んだ。
俺は優しく君の頭を撫で、再び寝かしつける。
寝ながら涙する君を見た。
君の頬を濡らす涙を、ハンカチでそっと拭った。
涙の跡にそっと口づけをした。
どうか、君が幸せな夢を見るように。
希望にあふれた目覚めとなるように。
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