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「その辺のとこ、現実問題としてどうなの?」
「やはり、現在停止している原発も再稼働させるしかないですな。火力、水力だけではコストも効率も悪すぎる」
団官房長官の言葉を継ぎ、藪首相がそちらに視線を向けて尋ねると、さも当然だと言わんばかりに経済産業大臣の館山辰五郎が答える。
「待ってください! そんなこと、地元住民が認めるはずないでしょう? うちの原子力規制委員としては早急に再稼働へ踏み切ることはできません。強引にそんなことすれば、次の選挙にも影響するかもしれない」
だが、その意見には、慌てて桐河駿吉環境大臣が真っ向から反対する。
「じゃあ、なにかね? 君は火力発電に任せて二酸化炭素排出量をこれ以上増やせと言うのかね? そんなことしたら、温暖化に厳しい諸外国からの風当たりがますます強くなる。それこそ、君ら環境省の最も望まぬところではないのかね?」
「だからといって、いい加減なストレスチェックで再稼働なんてさせたら、日本の原子力政策が疑問視されてしまいますよ?」
すると、桐河大臣もそれにまた異を唱え、二人は俄かに言い争いを始める。
「だからあの機会に原子力からクリーンエネルギーに舵を切っておくべきだったんですよ! そうしていれば、今頃は中国なんかに後れをとらず、日本がこの分野で世界に頂点に立てていたんだ。こんなただの見せかけじゃなく、本当の好景気ももたらされていたはずだったんですよ!」
「今はそういう話をする場じゃないだろう! 論点がズレている! それにあの事故までは、原発こそが温暖化を食い止められる、安全でクリーンなエネルギーだとみんな信じていたじゃないか!」
「まあまあ、お二人とも、ただでさえ暑いのにそんな熱くならないで。では、実情に照らし合わせてこういたしましょう」
ますますヒートアップして別問題で罵りあう大臣二人に、見かねた夜具内特命担当大臣がなだめるように口を挟んだ。
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