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害虫だけを危惧する平和な夏が謳歌できたらば、と夢に思わない夏はこれまで無かった程である。
特に、今年の夏は。
特に絶賛困り果てている。
何故かと問われれば、いや、本当に執拗に問われればだが、まずは俺の闇深い家族について話さねばなるまい。
まず、俺は四人兄弟の長男である。
四人兄弟の。
まずそれだけでもこのご時世珍しいものである。
だがそれだけではない。
まず長男たる俺が五月産まれに始まり、
次男は六月。
三男は七月。
そして四男は八月。
無論、全員年子であり月が順番に並んでいるのである。
両親は二人とも公務員のA型である。
これだけでも勘の鋭い人ならばいやな予感を感じ、察しのいい人ならば俺を哀れみ涙することだろう。
両親はまず、長男である俺を春に生みたかったのだ。
四季の始まりたる春に。
そしてそれは見事に成功し、俺が産声を上げた。
悪夢の始まりである。
その後次男の妊娠も春の出産に向けての計画的なものだったのだが、ここで何が悪夢かと言えば、
次男が六月に産まれてしまったことである。
長男である俺が五月生まれ。
そして次男が六月生まれとなった。
この一月違いの偶然が、両親のA型魂に火を付けた。
この後、七月、八月、九月、と並べていきたいと。
両親がこの決心を熱く胸にたぎらせていることに、零歳児だった俺が見抜けていたならば、犬じゃないんだからおよしなさい。と仏顔負けの仏顔で助言したことだろうに。
悲しきかな、両親を止めてくれる良心は存在しなかった。
緻密な計画、そして計算に計算を重ねた子作り。
両親の思いは常に一つだった。
誕生月を並びで子供を産めるとこまで授かる。と。
元々大の子供好きな両親である。好きが高じすぎた結果、
お察しの通り狂気の沙汰である。
結果、何とか経済的な問題も手助けとなり、四人だけでなんとかこの世界一あほらしい子作り計画は打ち切りとなった。
悪夢がここで終わらないのが、悲劇と言わずしてなんと言おう。
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