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両親は前回の失敗をしっかりと胸に刻み、そしてそれを忘れることなく、次回の対策を練り、万全の策を高じていく。
将棋のAI並みに学習を積んでそれに対処する術を見出していく。
全くと言っていいほどに無駄な学習能力であり、熱意である。
そんな両親の鋭利すぎる愛情を身に降り注がれ、俺達はすくすくと育った。
そしてすぐに思い知る。
悪魔の存在を。
長男、次男、三男、と失敗を積み重ね日々に進化の為の努力を惜しまない両親は、末っ子をとんでもない悪魔へと見事育て上げてしまった。
三男までの教育法に改良を加えた完全なる英才教育を、四番めは一心に注がれ、そしてたっぷりの愛情をこれでもかと言うほど貢がれ育った。
頭脳明晰、スポーツ万能、眉目秀麗。
いわばパーフェクトヒューマンである。
身長も高く、はきはきとしゃべり、かといって自己中心的でなく、全ての人に慈しみの心を忘れず、何事に対しても真摯に向き合う。
学生時代なんぞにはクラス満場一致の究極の学級委員長も勤め上げた。
俺は声を高々にいいたい。
お前らは騙されているぞ!早くそいつから逃げろ!と。
奴の魔性はあざとさを他人にあざとさ、として感づかせない。
いとも簡単にするりと相手の懐に潜り込み、指示を集め、自分は意図せぬ形を装い全てを自分への追い風へと変えてしまう。
誰よりも純白真っ白を気取ってへらへらとさわやかに笑っているが、
実は奴の中身は黒も遠慮をするほどの真っ黒なのである。
西に不釣り合いと見定めたカップルあれば、心底人の良さそうな笑顔を携え近づいていき、持って産まれた眉目秀麗と話術を用い、何の後腐れもなくそいつらの赤い糸をぷつん、と切ってしまう。
東に男女交際の三つ巴が発生すればすぐに馳せ散じて余った一人を連れ去り、残った二人のカップルを成立させる。
北に歌手を目指す音痴が現れれば、にっこり微笑んで君ならばやれる。ハリウッドへ留学を勧める!と涙ながらに手を叩く。
南にダイエットに励むデブあれば、マシュマロ系女子、ブームの兆し。を熱心に説きダイエットを放棄させる。
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