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そう決心してからは迅速に動いた。
注文が立て込んでいるというケーキ屋に無理を言って人が入れるよう工作したケーキの依頼を何とかこじつけ、
俺は家で一人こっそりとケーキから飛び出すときのアクションの練習を重ねた。
まさに血の滲むような練習の日々である。
あれから一週間。
ついに時は満ちた。
とあるホテルの会場を貸し切り開催される末っ子ばーすでぃフェス。
例年を上回る盛り上がりも見せ、プレゼントの雨霰。両親もそれに混じって大きくなったもんだと他愛ない感動に涙する。
他の兄弟達はここからは目視で確認できなかったが、どうせ室内の隅っこでふてくされているに違いない。
若くて可愛い娘達にわーきゃーと何かともてはやされる末っ子を舞台袖でこっそりと盗み見ては今に見ていろと心をたぎらせ、ケーキ屋に発注しておいたケーキの格納スペースに潜り込む。
ばーすでぃソングの合唱が始まる。
手はず通りステージの真ん中に運ばれていくケーキ。
こんな大きなケーキ、三つもあるの?
という末っ子の声がケーキのクリーム越しに聞こえた瞬間、俺は楽屋に同じサイズのケーキが三つ用意されていた意味を悟り血の気が引いたが、跳び出すしか道の残っていない俺達には、もう遅かった。
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