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「またいかんかったけん……」 「なかなか難しいよね」  がっかりしながら戻ってくるほとり。昔は、いろいろな人がほとりの姿を視認することができていた。見えないものでもたしかにあると信じられていた時代。言い伝えに、迷信。その中にはきっと、人のあたたかさとか繋がりというものも含まれていて。そういうものを素直に信じられない現代だから、ほとりの姿ももうみんなには。 「そやね。落ち込んどらんよ。藍がいてくれるけん」 「う、それは、どうも」 「感謝しとるっちゃ。いつも、ありがとうね」  それでもほとりは、気に病んでなんていなかった。昔を懐かしみすぎるぼくの、思い出にしがみつこうとする性格がほとりの支えになれているとしたら、ぼくはまた少し、自分を好きになれそうだった。  また、隣り合って釣りを始めた。ぼくたちは中学生と同じ姿をしているけど、きっと内面はずいぶんと別々の形をしている。ぼくはこのまま、なにもかもが止まってしまえばいいと考えている。ほとりは、これからを受け入れていける強さを持っている。 「あのさ」 「どーしたと?」 「いつかは、会えなくなるのかな」
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