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昼休みの校庭。3年男子は多分5時間目が体育なんだろう。数人の生徒がジャージに着替え、サッカーをして遊んでいる。
その中に同じ化学部の横塚先輩の姿が混ざっているのを、高1Aの教室の窓から見ることができた。
「おたまったら……」
私が窓の外へ向ってじっと熱い視線を送っているものだから、見かねた親友のハナちゃんが声をかけてくれた。
「玉砕しても、まだ好きなんだね」
「うん……」
目線だけは窓の外へ残したまま、私は頷いた。
こんな気持ち、引きずっても仕方のない事は、よく分かってる。
私は仔猫のたま。
先輩にとっては所詮、カワイイねぇと撫でてやりたいだけの愛玩動物レベルでしかなかった、と1週間前に判明したばかりだ。
なけなしの勇気を振り絞って、告白したんだけどなぁ……
深いため息をつく私に、ハナちゃんは憐みの目を向けてきた。
「まだ6月だよ。運動部じゃないから、化学部なんてそう何回も活動無かっただろうに。まさかそこまで思い詰めるほど好きになっちゃうなんてねぇ」
「だって7時間だよ。そんな長時間、一緒に抽出実験なんてやってたら、恋の一つや二つ芽生えても当然だと思わない?」
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