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先輩はすぐさま駆け寄り、私の持っていたメスピペットをドラフト内で受け取ってくれて、流し台へ行くように促してくれた。 「痛くないか?」 「手袋をしていたから、大丈夫です」 「そっか、良かった。でも、よく洗っとけよ」 先輩は安堵の表情を浮かべ、残りの試薬を私の代わりにビーカーの中に注ぎ入れておいてくれる。 「……先輩」 私は勢いよく水を流して手を洗いながら、ドラフトに向かっている先輩の後姿に向かってそっと尋ねた。 「ん?」 「なんで、あの人にレポートを渡したんですか?あれってこの前私たちが実験したやつですよね」 「あぁ。なんでも、指定校推薦取るのに必要らしいんだ。どういう部活動しているか、学校側にアピールするんだって。彼女、あれでも一応うちの部員だから」 振り向いた先輩は、私の目が点になっていることに気づき、苦笑を漏らした。 「……って、たまは会ったことも無かったか。園崎は完全に幽霊部員だもんなぁ」 バスケ部の方が忙しくて、化学部には全然、顔出してくれないんだよ、と先輩にはむしろ寂しげな顔で微笑まれてしまった。 ……それって、ハナちゃんが言ってた例の…… それまで胸の中でもやもやとしていた感情が一気に膨れ上がってしまった。 私はいてもたってもいられず、まだ濡れた手のまま、廊下へ飛び出した。 「待ってください!」     
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