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レポート用紙の表紙に目を落として私の名前を読み上げた園崎先輩は、くすりと笑った。
「なんだ、ホントにヒヨコじゃない」
くぅ~やっぱり言われたぁ!
「それでヒヨコちゃんはどうして、私が気に入らないの?まさか、啓晃が好きとか?」
「い、いいじゃないですか、別に」
「へぇ……啓晃なんかが好きなんてねぇ」
「なんかって……失礼ですよ。横塚先輩の良さが分からないなんて、園崎先輩も見る目が無いですね」
精いっぱいの嫌味を込めて言ってみたけど、園崎先輩には、その真っ直ぐな髪の毛ひと筋分のダメージも与えられなかった。私みたいなちんちくりんの小娘が何をほざくんだって、マスカラたっぷりの目がそう語っている。
そして彼女はふっと口角を吊り上げた。
「いいわ。そんなに言うなら、勝負しない?来月の球技大会であなたが私から得点できたら、このレポートの事、考え直してあげる」
「え……」
「私はもちろんバスケに出るからね」
待ってるわよヒヨコちゃん、と園崎先輩は余裕たっぷりの笑みを残し、立ち去ってしまった。
なんなのよ、あれ……
私は握りしめた拳を震わせ、その忌々しい後姿をいつまでも見送った。
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