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「お母さんは、どうして何も言わないの?」
リビングのソファで眠る父親にタオルケットをかける妻。私には無職の中年男性を甘やかしているようにしか見えなかった。
「お父さんは、少しお休みしたいのよ」
そうやっていつも、自分に言い聞かせてきたのだろう。伏し目がちな眼差しに、憂いが映る。お母さんも不安なのだ。
「あれこれ言うけど、このままじゃいけないって分かってるわ。だから、今は自由にさせてあげてね」
「本当に、大丈夫?」
「……大丈夫よ。人間誰だって、休憩したい時があるわ」
そう言われたものの納得出来なくて。私は勉強机に向かいながら、お母さんに言われた言葉を脳内で何度も巡らせた。問題集をぱらぱらとめくる。集中出来ない。時刻は夜の11時になろうとしていた。気分転換に何か飲もう。私は1階のキッチンへ降りた。
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