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その日は、喉が乾いて目が覚めた。
時計を見れば、もうすぐ夜の12時。自分の部屋を出るのは怖かったが、どうしても冷たい物が飲みたかった。足元を確かめながら階段へ。電気のスイッチを辿りながらキッチンへ降りると、リビングから明かりが漏れていた。
お父さんが、1人でテレビを見ていた。ソファがあるにも関わらず、床の上であぐらをかいている。丸い背中がゆっくりと私の方へ向きを変えた。
白い頬、黒い瞳。両足の動き方もいつもと同じ。顔は赤くない。大丈夫。毎朝見るお父さんと一緒だ。
「こんな時間にどうしたんだい」
「喉が乾いたから」
「ああ、そういうことか」
大きな手が冷蔵庫を開け、麦茶をコップに注ぐ。渡されたそれを一気に飲み干すと、お父さんはおもしろいことを思いついた顔をした。
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