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学校では来月授業参観がある。テーマは家族だ。私の家はお父さんもお母さんも忙しい。作文に書けるお出かけも、豪華な夕飯も、おもしろい話もない。だから今日はかなり特別だ。
「作文に書いたら内緒じゃなくなっちゃうけど、お母さん怒らないかなぁ」
私はいひひ、と歯を見せながらお父さんに聞く。お父さんはしょんぼりとした表情で口を開いた。
「ごめんな、どこにも連れて行ってやれなくて」
「ううん、今連れて来てもらってるよ」
本当は遊園地や水族館に行きたかった。でも、いつも約束をした日になると皆会社にでかけてしまう。わがままを言えば、周りの大人はおろおろする。だから私は笑って従うしか方法がないのだ。
頭の上でコウモリが回る。ぐるぐる、ぐるぐる。その場を回っていれば、景色は変わらない。だから、傷つくこともない。
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