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 私はまだ高校生だ。毎日は勉強と部活尽くし。アルバイトをしたことはないから、社会の厳しさは分からない。だだ、お父さんが仕事を辞めたら困る。甘ったれの学生でも、それくらい理解出来た。  お母さんの尋ね声は大きくなり、やがて悲鳴に変わる。生活はどうするの、家のローンだって、私だけの給料じゃ。お父さんに向かって罵声が飛んでいく。  不揃いな訴えの中から、男性の頼りない回答が宙を舞う。  退職金や、失業給付金もある。しばらくは大丈夫。ハローワークにもすぐ行くから。とにかくあの部長はだめなんだ。あいつはやばい。あの人について行ったら会社の不正に繋がる。精神を病む。残業がひどい。仕事がキツい。俺は今まで充分頑張った。  私は吐き気を堪えて2階の自室へ逃げた。扉を閉めて、ベッドの布団をかぶる。聞こえない言葉の応酬が聞こえる気がして、耳を塞いだ。
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